法学部といえば司法試験…それって本当?今時の法学部の実態とは

さて、本日の教育業界トップニュースといえば「司法試験合格率低迷、法科大学院「存続危うく」」なんてありますけど、司法試験合格率の低下についてですね。皆様、法学部と言えば司法試験を受けて弁護士になると思ってらっしゃる方が多いのですが、実態はまったく違うのです。

法学部で最も多い進路先は「保険・金融」で約25%

法学部の実態をご存じない方は、「法学部です」と名乗る大学生に「弁護士になられるんですか」と聞く。そして学生は「いえ…そういうつもりはありません」と答える。法学部生のほとんどは司法試験を受けないのである。

一般就職であれば、「保険・金融」が卒業生全体の25%にも昇る。
つまり、法学部の4人に1人は銀行や保険会社、証券会社などに就職するのである。

どうだろう、こう見ると、法学部に入るイコール司法試験で博打、ではなく、むしろ、法学部イコール不況に強く手堅く給与の高い企業というイメージにならないだろうか。法学部の就職とはそういうものなのである。実際、慶應からUFJには就職が有利であるなど、各メガバンクには有名大学に「枠」を作っている所が多い。我が子にメガバンクに入って欲しいと思うなら法学部をおすすめする。

現在は大学院進学=約20%、就職=約80%

大学院進学は全体の1/5…決して多くない。ましてや、次項で触れるが、大学院進学の項目は「法科大学院(司法試験コース)」と「大学院(研究コース)」に分けられるので、大学院進学した者の全員が司法試験を受けるわけではない。

ちなみに、「現在は」と書いているのには事情がある。
司法試験はいま、抜け道として用意した、法科大学院に行かずに司法試験を受けられるという「予備試験」のほうがむしろメインになりつつあり、従来の法科大学院ルートは嫌煙される傾向にある。このままいけば、法科大学院の人数も数も減り、大学の学部内に「予備試験を受ける用のコース」が誕生するだろう。法科大学院以前の様相に戻ろうとしているのである。あと2年もすれば、この記事も書き直さなくてはいけないだろう。

「法科大学院」と「大学院」の違いとは?

法学の世界では、学位の呼称が他の学部とは異なるので注意が必要だ。

  • 「学士」・・・大学の法学部を卒業した者に与えられる。
  • 「法務博士」・・・【専門職学位】法科大学院を卒業した者に与えられる。新司法試験の受験資格を得られる。学士の学位を修得した後に3年又は2年の課程を修了することで授与される。一般的な【博士】とは異なる【専門職学位】であるので、ドクターとは呼ばれない。
  • 「修士(法学)」・・・【修士学位】大学院の修士課程、博士前期課程修了者に与えられる。一般的には「マスター」と呼ばれる。
  • 「博士(法学)」・・・【博士学位】大学院の博士課程、博士後期課程修了者に与えられる。「法務博士」と異なり、研究業績を学位請求論文として提出し、審査を必要とする。一般的には「ドクター」と呼ばれる。

上述の通り、法科大学院修了時に授与される「法務博士」は「博士(法学)」ではない。前者は、履修により得られるが、後者は研究に対して授与されるものである。

最近は弁護士でも名刺に「修士(法学)」と記載されている人が少なくない。これは、試験だけのテスト脳ではありません!専門もかじってます!という意味でもある。

大学院卒業後の進路は?

法科大学院卒の「法務博士」の場合は、たいてい、司法試験→司法修習→法曹(裁判官・検察官・弁護士)のルートを目指すことになる。

「修士(法学)」の場合は、修士1年の12月から大3と同時期に「大学院卒枠」で就職を探すことになる。大手企業や公務員には「大学院卒枠」があり、大卒と同じ条件での就職では無く、同年齢の就職組と同じ給与が最初から設定されていることが多い。なので、就職に不利ということはない。教師や理系企業ではむしろ修士を歓迎している。やはり大学程度では専門知識など皆無なので、修士レベルのほうが適しているということなのである。

「博士(法学)」の場合は、卒業後に非常勤講師→准教授→教授を目指す研究者ルートを目指すことになる。ただ、最短で博士3年で論文審査を行って修了する場合もあるが、大学院に学籍をおいた状態での研究のほうが楽なので、十分学位請求論文が書けるにもかかわらず、助手や非常勤講師を行いながら院生を続けている例もある。それゆえ、短くて出たから優秀、と一概に決めつけはできない。なお、卒業してしまうと、自分の研究室が無くなる上、非常勤講師の職がなければポスドクと言われる高学歴ワーキングプアになってしまう可能性が高いので、ますます卒業に慎重になる。在学中の博士論文に挫折した者は「単位取得後退学」として外に出ることも多い。

というわけで、

最近のブーム。4+1年の「院卒枠」

大卒は熾烈な就職競争を行っているが、院卒はそこまでではない。しかも、法学部時代遊びほうけていた者も多い「大卒」に対し、法学部の「院卒」となると、就職できなかったから院に行ったんだろう?というタイプはあまりいない。文系ではあるが、法学の院卒の評価は比較的高い方である。

最近のブームは、大4のヒマな1年間を繰り上げて大学院の授業を受け、6年のところを5年で院卒となって就職するというヤツである。1年短く卒業できてしかも院卒、これは結構美味しいのであるがーー大学院の中にいる、特に博士課程在籍者は「なぜ大4という最後のバカンスを存分に楽しんでおかなかったのか」と言う。確かに、大規模な旅行を企画したり、ほんとうにやってみたかったことをやったりする最後のチャンスなのであるが、きまじめで生き急ぐ若者には4+1のほうが魅力的に見えるのである。なお、就職組であれば4+1のほうが有用だが、研究組(博士目指す組)であれば大4は自分に不足した語学学習などに費やすほうがよっぽど有用である。なぜなら、研究組にとって1年や2年の差など大したことは無く、結局、能力があるか、良い論文を書けるか、そこなのである。何年もかけても書けない人もいれば、才能があってさくっと書けてしまう人もいるからである。

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Sym
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中学受験・大学受験・大学院受験は自分が一般入試で経験。

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