新人が後輩に「カリテって(正答率)何%まで(子供に)直すようにいえばいいんでしょうか?」って聞いていた。
そうか~、そういう目で見てしまうんだーって思った。長年やりすぎていると、初心や分からなかった頃のことを忘れることがある。同時に、この新人は、子供のことを考えているのではなく、指示された内容しか考えてない…いや、優しくいえば、まだ、子供のことを考える余裕がないんだなと思った。
日能研のカリキュラムテスト(カリテ)の意義と活用法
日能研には、公開模試(昔一時期、センター模試とかいう名前になったこともあるが、また公開模試に戻った)とカリキュラムテストがある。公開模試は月1で模試扱い、カリテは週1で習った部分のまとめテストと考えるのがよい。
ぶっちゃけていうと、重要なのは公開模試のほうで、カリテではない。真の実力は、公開模試で測られる。今はどうか知らないが、昔もそうだった気がする。公開模試でクラス変動、カリテでクラス内順位変動だった。2年くらい前に小6の子に聞いたところ、公開模試の成績でクラス分けが決まるのでカリテは補強的要素にすぎないといっていたので、今もきっとそうなのだろう。
じゃあ、カリテはいらないのかというとそうではない。いまでいう、Mクラス、昔でいう栄冠・特クラスの子供は地頭が良いので、大して普段から勉強していなくても公開模試でさくっといい点をとってくることが多い。そしてクラスは落ちない。だが、普通の子供は、普段から勉強していないのにいい点がとれてしまうなんてことはないので、目の前のカリテをひとつひとつ努力して実力を積み上げていくことになる。習ったことを忘れないためにテストするのは当然のことだ。
カリテ対策、勉強方法、本番の心構え
カリテでは、基本的に習っていないことは出ない。出るとすると、9月以降のステージⅤの応用問題か、Mクラス対象の応用問題辺りだろう。なので、偏差値50ない場合は特に、習ってないことが出たらどうしようなんて思う必要はない。以下、応用ではなく基礎の子を前提として話を書く。
使うものは、本科テキストと栄冠への道、そして計算と漢字で十分。余計な教材は不要。飽きやすい子供のために基本問題シリーズが出ているが、そんなものやっている暇があるならば本科の解放と答えを見ないで全て言ってみろと言いたい。
そして、点数をとる重要なポイント、それは解く順番。基礎→共通の順番で解かないと絶対に時間が足りないし実力も発揮できない。掲載順が共通からだからといって共通からやらなければいけないなんていうルールはないし、そんな形式主義に陥っていては受験に合格しないので、ルールに反しない範囲で狡猾にいこう。
国語
国算では、共通問題100点分+クラスに応じて応用問題or基礎問題50点分がある。まず、基本問題を受ける場合は、共通問題ではなく基礎問題から解くことを強くおすすめする。なぜなら、難易度が、基礎<共通<応用、だから。
国語では、まず点数をとるために必ずやらなければいけないのは「漢字」。試験範囲の漢字を8割方書けるようにせずして、点数がとれません~と嘆いても、漢字を覚えましょう、で終了する。
どうしても漢字をやっても点数が伸びない場合、国語の文章のほうでなんとかする必要がある。小説では安定して点数がとりにくいが、評論ならば、習ったことを素直に生かせば点数がとれる。なんとなくでも小説で点がばしばしとれてしまう子は、共感能力が高いか本が好きかのどちらか。そして女の子に多い。共感能力が低いために小説で点数がとれない子については別記事で以前書いているのでそちらを参照していただきたい(【頌栄】物語文と社会が苦手な子の合格例<前編>)。
算数
テストまでの勉強方法は至ってシンプルで、基礎問題を解くクラスならば、発展問題や練成問題をやらずに、演習4(ステージや学年によっては考えよう5)までを何周もする。習った考え方を使って、正しく公式を使って例題通り解ければ良い。覚えてしまって意味がないなら一度栄冠への道をやらせて、また本科をやらせればいい。
作戦としては、基礎問題から着手する。まず、基礎問題を45点以上とるようにする。計算問題を絶対に間違えないこと。基礎問題を3週してもいいからミスしない。検算必須。満点ゲットするつもりでいく。次に、共通問題の大問1、計算問題を3週してもいいので1問間違えくらいのつもりでいく。特に(6)の単位換算には注意。そして大問2の(3)くらいまでと、大問3~6の(1)だけを確実に拾って点を確保するようにすれば、70点は容易いはずだ。というか、基礎問題+共通大問1だけで70点いく。
私が見てきた経験上、カリテで70点とれない場合、クラスもA2の下のほう~A1である可能性が高い。やり直すと100点いけるのに本番では70切ることもある…場合、A3だったことがあるA2~A2だがA1に落ちない程度、の可能性が高い。
やり直しをする時は、冒頭で新人がいっていたように正答率表を見るのがいいが、正答率が何パーだから直す直さないというのはこれまた形式主義だと思う。
何点をとりたいかを決める。
↓
解答に点数配分が書いてあるので、問題や正答率表と見比べながら目標点数に達するためにとる問題を選ぶ
↓
計算ミスしても目標点数に達せるように、10点分くらい上乗せして問題を選ぶ(2問多めに選ぶ)
これが重要であって、何パーセントだからという言い方はよくないと思う。男の子だと具体的なパーセントを言うとやる気が出る子が多い(男子は本来競争本能があるので、得意科目で他人と比較していい点数とってドヤしたい子が多い)が、女の子だと逆に劣等感を煽ることが多い(みんなできてるのに私はできてない…とか、出来てる人のほうが多いんだ自分はダメだ…とか)ので、子供に合わせてその辺りの使い方は変えていくとよい。
社会
本科テキストを読んでいれば点数が取れるのであればそれは暗記力に優れているか興味があるか天才かである。普通の人は本科テキストだけではとれないのが普通。そこで、栄冠への道を使う。
問題研究はやらなくていいので、穴埋めと一問一答の部分をひたすら繰り返しやる。漢字が間違うとアウトなので、ひらがなで書いたりせず、必ず漢字で書くようにする。漢字をミスらない子であれば、音読でもいい。というか、正確にいうと、まず音読しながら、空欄は手でノートに書き、全て埋め終えたらノートを見ずに空欄の所も含めて声にだして音読するのがいい。
やっつけ仕事のように栄冠への道で穴埋めの部分しかやっていないと、たとえば栄冠のほうでは「1904年に○○があり…」とあって、テストで「○○年に日露戦争が起き」と出てしまうと書けない。ゆえに、解いた後の音読は重要だと思う。これをやるだけで栄冠が二度美味しいと思う。
社会はメモリーチェックが難易度高めに出来ていて、偏差値55あっても習ってないよ知らんよっていうモノが載っているので、基本的に偏差値50くらいまではメモリーチェックではなく栄冠がいいとおもう。社会の栄冠は非常に優秀だし良教材だと思う。
そのほか、地理であれば「白地図」を活用するといい。最初は絶対にできないので、3枚ほどコピーして、一枚目は地図を見ながら埋めさせ、答えを見て丸付けさせる(なぜコピーを使うのかは後述する)。二枚目は、地図を見ずに書く。答えをみないとわからないところは潔く見て、赤で書いて覚える。二枚目を見つめながら音読などしてもいいので5分時間を与えて暗記させる。5分後、三枚目に、7割方書けるようにする。三枚目の時点で、「うわーここ思い出せない!」「なんだっけ?!ううーん!」「ここだけ思い出せない!」「ここがいつも覚えられない!」というようになればしめたもの。社会のテストでは、できなくて悔しい!次こそは!という気持ちが大切なのだ(白地図勉強法についてはこちらの記事を参照)。
それで、なぜコピーを使うのかというと…。きっとノート主義者のお母様がいるとおもうので説明すると、地名というのは、地図という図と不可分のものなのです。その図のその場所が何という名前なのか、を覚えるための勉強なので、日本地図を見ながらその場所を覚えて書くことがとても大切なのです。テストでは文章で出てくるじゃないかと反論する方もいらっしゃるでしょう。しかし、文字記憶というものより、イメージ記憶のほうがはるかに定着しやすい。ああ、松山、松江…たしか松江のほうが地図テストで上のほうに書いたような…というイメージ記憶があるだけで、愛媛なのか島根なのか、選択問題であれば決定打となります。
理科
理科は、社会と似ているものの、生物・地学・化学の一部と化学の残り&物理では勉強方法が異なるので、注意が必要。
生物・地学・化学の一部――つまり暗記です。化学においても、名称の暗記がある。これは、メモリーチェックと栄冠への道を繰り返し行うことが大切で、例えば「二酸化炭素を集める方法は?」→「下方置換」、ここまで留まらず、「なぜ水上置換や上方置換ではだめなの?」→「水に溶けちゃって集まらないし、空気より重いくて上にいかないから無理」と、ここまで答えられるようにすればばっちりかと。
物理と化学の残りにおいては、実際に計算したり図に書けることが必要になるので、とにかくグラフや表は自分でかけるように。お母様方へ。定規をこよなく愛する女の子がいますが、本番は定規ないので、真っ白い裏紙にフリーハンドで手早くかけるように練習しておくとよいです。計算や図が苦手な子がいますが、大体そういう子は、算数の「比」が得意ではない。比や百分率、割合が苦手な場合、理科にも直結してしまうので、そちらをまず克服しなければいけない。
栄冠や本科の問題には表がかいてあることが殆どだけども、あえて自分でノートに書いてそこに書き込むのがよい。ちゃんと点数がとれる子は、なぜその問題でその表があるのか、どういう意味があるのか、わかっている。わからない子は、表を埋めればいいとしか思ってないから、問題が解けない。表を埋めることが重要なのではなく、問題を考える上で親切設計として表をおいてくれているだけなのだとわかることが必要なのだ。そして、不親切設計ならば自分で表を書くことが必要。
あとこれはどうしようもないことでもあるのだが、電流の問題と方位磁石の問題においては、どうしても付属の解説がわかりにくい。その答えその解説を見てもなぜそれになるのかわからないことが多い。不親切設計である(おそらく、教材作成者が工学系出身者で、基本中の基本だし書かなくてもいいだろうと思って省略しているのだろう。社会系の出身者が、日本地図と工場の配置を見て、「あっ海の近くだし千葉に2つ点があるから製鉄所だな」と思うのと同じである…。そういう意味では、社会の解説も解説不足なのかもしれない)。
電流と方位磁石がわからなくなってしまう原因の一つは、ルールが浸透していないところにあると思う。どちらの手を使い、どの指が何をさし(親指が電流の流れる方向)、残りの指が何を指すのか、そして、方位磁石を上に置くとき下に置くときの影響の違い、ここをしっかりと勉強し、どの図においてもペンをおいていちいち確認するくらい徹底しないといけないと思う。
「なぜ?」を「そうなっているからよ」で済ませない
点数さえとれればいいという点数主義は、かの有名な学者の外山滋比古氏もいっているが、創造性や自主性を損なう(『思考の整理学』のグライダー人間と飛行機人間を参照)。中学受験を運良く乗り切ったとしても、今度は大学受験で躓いてしまうだろう。難しいとは思うが、「なぜ」に注目することは、全教科において重要なことなのだ。
そして、「なぜ」という子供の質問を、世の中はそうなっているからだと無下にしてはいけない。欧米の中流階級は、家のリビングに大辞典を置いて、子供がわからぬとかなぜとかいえば一緒に辞書を引いて考えるのだという(『文系大学院生サバイバル』85頁参照)。18世紀の哲学者ルソーも、教育論『エミール』で似たようなことを述べているし、親が子供に「問題を解決する道」を示す方法は、辞書の使い方を教えることだ、とされる。
親は、子供に自分以上に伸びて欲しいと期待するが、自分に質問をすることを嫌う親が多い。なぜときけば、そうなってるの、そうだと思いなさいという。原理を聞けば、へりくつを聞いているとぶった切る親もいる。親自身が聞かれて嫌だと思うものを、子供にはどっかで誰かから学んでこい、そして点数を稼げだなんてちょっと無理があると思う。勉強しなさいといいながらテレビを見ているのも説得力がない。
まずは、親も子供と同じ目線になることを恥ずかしがらず、一緒に問題と向き合うことが必要だ。完璧な解答ができなくても、辞書を一緒にひいたり、一緒にグーグルで検索したりできるだろう。そうした体験が、子供に、「なぜ」を問うおもしろさを感じることを許すのだ、と私は思う。
ただ、現在、働いていて余裕がない親御さんがとても多い。日本は親が子供を育てるのにあまり向いていない国なのはよくいわれることだが、そのかわり、地域や塾、学校が頑張っている。ただ、頑張っているところに丸投げするのではなく、どんな親でも、少し、心を砕く程度、余裕が持てるような、そんな社会だったらよかったのになあと思わざるを得ない。社会のせいにしても仕方が無いのだが…。
まあ、ちょっとでもいいから、子供の「なぜ」や「わからなさ」に寄り添ってみませんか。
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