偏差値30台からの八雲合格の例 「学校見学は、授業中じゃなくて、休み時間こそ見るべきなんだよ。知ってた?」

こちらは日能研の授業で社会を受けていないが偏差値50を超えた例よりかなり厳しい状況にありました。少女Bとしましょう。

少女B:品川女子志望。第二希望が八雲。
もう秋からはクラス替えがないためA1のままだったが、冬になると成長し、常にクラスで一番を走っていた。
やる気がないわけではないがマイペースでのんびりしており危機感がない。
算数以外の全教科の偏差値が30台という状態で6年の10月から預かり、地獄の冬期講習を尽きっきりで指導して八雲に合格。

国語と算数は通常時期から教えており、なんとか偏差値45に食い込むまでになりましたが、社会理科がとてもまずい。そこで、授業こそとらないものの、小テストと自習の形式を利用して偏差値向上を図りました。

小テスト教材を活用せよ!

日能研の教材は、今使っているもの以外は価値がないと思っていませんか?新しい教材ほど意味があると思っていませんか?違うのです。個人的に最も価値があると思っているのは紛れもなく「ステージⅣ」シリーズ(小6前期)です。ですが、それ以外の教材にも意外な所で役に立つものがあるのです。ちなみに、「栄冠への道」を使った学習方法についてはこちらを参照してください。

夏期講習「標準」についている「基本確認」を利用する!

実は、6夏期標準には「基本確認」という名前の1頁しかない小テストがあります。これをコピーして量産し、基礎のチェックに使います。栄冠への道をみっちりやる時間の無い生徒(時間がないというのは、教える側や面倒を見る側に時間が無いということで、生徒に時間が無いということではありません)にはこちらのほうが楽です。
範囲を指示し、栄冠で勉強してもらいます。そしてこの「基本確認」のコピーに記入してもらい、テストします。

なぜコピーなのかというと、夏期テキストは太いし邪魔なので、ただでさえテキストが多いのにいちいち開くのは無駄だからです。開いている時間が無駄です。なら最初からコピーしておけばすぐテストできるではありませんか。コピーするお金がもったいないなんて思うのは間違いです。10円で子供にすぐテストしてやれるなら安いではありませんか。
子供からしたら、テキストを開いてノートに書き込むのは自分で勉強するということであり、何かに記入して点数を出されるというのはテストであるという意識もあります。ノート至上主義ではなく、子供の成績や成長を重視するべきです。

偏差値40無い子供にメモリーチェック社会をやらせるな!

知らない方が多いのでチラッと言っておきますが、社会のメモリーチェックは、実は難しいのです。
偏差値55あっても「あれ?こんなの載ってたっけ?」と思うような問題が時々混ざっています。
栄冠の基本もできていないのに社会のメモリーチェックをやるのは間違っています。教材にもレベルというものがあるのです。
ちなみに理科の場合は存分おやりになると良いでしょう。むしろ栄冠よりも理科メモリーチェックのほうがわかりやすい教材かなと思います。

さて。偏差値40ない少女Bの社会をどうやって向上させるか……ここからが私と少女Bの戦いの始まりでした。

鉄板!地理が出来ない子供はまず白地図から!

コチラの記事(子供に宿題をやらせるには~意欲編~ 「成功体験」を積み重ねろ!)で、白地図作業ノートを使った勉強方法を書きました。今回もこれの応用編です。
前掲記事では、その場で何度もやらせて覚えさせる方法を用いましたが、少女Bの場合は、算数の時間の最初に30分使って社会のテストを行うやり方を導入していました。社会にまるっと時間をとれないので、標準編ではなく応用編ということになります。

まず、白地図作業ノートの見開きを宿題に出します。「次回はここねー」といって宿題に出します。「合格点は8割ね」とか言っておきます。このとき、コピーを渡して、オレンジのペンで記入させてから帰らせると効果的でした。特に中高生以上の女の子はものすごく赤チェックシートが大好きで、持っていない子はほぼゼロでしょう。なので、オレンジやピンクのペンでコピーした白地図の穴埋めをしてもらい、赤シートで隠して勉強することを推奨しました。(少女Bの場合、もらった白地図を何枚もコピーして書き込みながら勉強する方が少女Bには合っていたので、途中からはコピーを渡して自分でやりたいようにやらせました。)

次に、宿題に出しておいた部分のテストをします。タイマーを用意し、5分など、かならず時間を計ります。タイマーは本人の前に置いて危機感を煽ります。採点するときは漢字ミスも厳しくチェックします。余りに出来が悪い場合は、難易度の高い地名を除いて「庄内平野」などの重要用語のみのテストにします。

これを白地図作業ノートの1章分でもやっておくと随分違います。少女Bはやたら火山が気に入ったようで、それ以降、過去問などで火山が出ると大喜びで取り組んでいました。気に入るポイントはよく分かりませんが、彼女は「出来るから好き」を体現していました。言い換えれば、少女Bは、出来るようにしてやれば自分で熱心に取り組む子だったのです。

歴史が鬼門

さて、地理は楽しくやっていた少女Bですが、歴史が苦手で、全然人名を覚えません。
同様に栄冠への道などを使って人名テストをしていくわけですがーーここでポイント……

記号問題より記述問題をやらせよ。

歴史でよく発生するミス、それが「漢字ミス」です。
テストで失敗しないためには、日頃から記述式で回答させ、テストで記号だったらラッキー!と思わせることです。
記号が当たり前だと思っていると、いつも記号だから漢字書けないもん!記号ならとれるし!と開き直るやつがでてきます。
というわけで、漢字ミスには厳しく指導します。

ちなみにずっとやり続けていたテストは、将軍の名前テストでした。
鎌倉時代、室町時代、江戸時代の主要な将軍を漢字で書かせるテストをずっとやりましたね。
せっかく名前がわかっていてもミスで2点、3点、これが積み重なってミスで20点とか失点していては合格できるところも落ちてしまいます。

他にも重要な歴史学習のポイントは、地理同様、その言葉には意味があること、それを理解させることです。

「乱」「変」「戦い」「一揆」の違いをちゃんと理解しているか?

一揆には「土一揆」「一向一揆」「国一揆」など色んな種類があります。これは一揆の性質によるものです。
ですから、地名と一揆の性質を理解すれば間違えなくなります。
暗記とはいえ、なんでもまるっと覚えろというのは間違いで、理解して覚え、いつ出てきても使えるようにすることが大切なのです。

さて、幸いなことに少女Bは公民が得意だったので私が教えなくても公民は良く出来ていました。

過去問との向き合い方

彼女も12月くらいから品川女子の過去問を時間を計って解く練習をし、その記録を全て記入して保存するようにしていました。

過去問を解く際の常識という記事に詳しく書きましたが、例えば「声の教育社」の過去問(品川女子学院中等部 27年度用)であれば、毎年の最低合格点や平均点などが載っていますし、そこに自分が解いたときの点数を記入する欄もあります。これを使って、毎年、全教科総合で勝負をします。

最低合格点からの逆算を行ってから取り組む!

詳しくは過去問を解く際の常識を参照して欲しいのですが、最低合格点に届くためには、各教科何点ずつ取れば良いのかを考えなくてはいけません。毎回、少女Bには「最低合格点」から「各教科とらなければいけない最低点」を設定してもらって、解答用紙の右下に目標点と最低点を書いてもらってから挑戦して貰っていました。

過去問・入試は全教科の総合力勝負!社会を補うためには……

社会の場合、毎回歴史分野の得点率が低く、彼女も頭を悩ませていました。
しかし、彼女の場合、国語と算数が安定した点をたたき出せるようになってきたので、社会も足を引っ張らないようにするけど、社会のために国語でもっと多くとる、社会のために算数でミスを減らす、という総合力勝負を意識するようになりました。結果として国語は、10月は偏差値30台だったのが、12月の最後の公開模試で46をマーク、算数も40前半だったのが50を超えていましたから、総合力勝負だという意識が彼女にはかなりよく効いたのだと思います。

受験に失敗したように見えるけど…本当は。

最終的に、彼女は品川女子を三回受けて全滅、八雲に行くことになりました。
しかし、品川女子に入るために頑張った彼女の努力は学習習慣にはっきりと現れていました。
八雲は入学前から宿題を大量に出す学校だったので、「受験終わったのに全教科の宿題あるんだよ?!ありえない!」と言って封筒ごと持って愚痴りにきていましたが、集中して優先的にやるべきものから潰していくという効率のよい学習法を覚えた彼女は難なく宿題をこなしていました。

「あのね、先生。学校見学は、授業中じゃなくて、休み時間こそ見るべきなんだよ。知ってた?」

少女Bは、制服とか学校とか、そういうのを選ぶことは大好きでした。服が大好きで、ドラマも大好きで、よくドラマの話をしていました。やることをやって、ちゃんと成績をとっていれば好きなドラマを見てもいい、それが私と彼女の約束でした。
彼女は、自分で品川女子を受けると決めたときから一生懸命頑張っていました。香蘭か品川女子か、迷って、品川女子を選んだ。11月にそれをしっかり決めてからというものの、自分の足で、お母さんが言ったからとかではなく、自分で前を向くようになりました。
半分以上、周囲の方々は「あの子が今から品川女子なんて無理だ。偏差値30台なのに」と言っておられましたが、確かに11月からじゃあ無理かなと思うのが普通でしょうけれども、私は諦めませんでした。彼女はできない子ではなかった、真っ白な紙のような子だったのです。知らないだけで、知識を得てテクニックを得ればいくらでも伸びることが出来る子だと思ったのです。私にはまるで彼女が、宝石の原石のように見えたのです。

あるとき、最初のその直感を確信する出来事が起きました。
彼女は服に拘るタイプだったのですが、学校も拘るタイプだったようです。お母さんを引っ張って、何度も色んな学校を見に行きました。そして、ドヤ顔で、「あのね、先生。学校見学は授業中じゃなくて、休み時間こそ見るべきなんだよ」と言うのです。「授業中はあんなに静かに見えるでしょ。だけど、休み時間になるとみんな廊下でギャーって騒いだりしてる。そっちが真の姿なんだよ。そっちを見て、それでもここがいいなって思えないとダメじゃない?」と言うのです。なんだその恋人と結婚するときには一度同棲してみないとわからない、みたいなセリフは(笑)。
彼女の言うことは正しいと思います。親は休み時間より授業の様子を見たいと思うでしょう。しかし、子供としては、そこに6年間通いたいと思えるかどうか、それが重要ではないでしょうか?
という私も中学受験のときは、「あの学校は蚊が多いからイヤ!」とか「あの学校は木造校舎だからいや!」とか「あの学校は印象が薄い…」とかそういう決め方をしていました…。結局私が某進学校に入学する決め手になったのは、休み時間に廊下で元気にあっち向いてホイをしている中学生を見たからでした。母校の先生がそれを見かけたら叱るでしょうけどね。小学生が見ているのになにをやってるんだ、って。でも、彼女たちは素で明るく元気でキラキラとしていて、とても眩しかった。眩しくて暖かかった。この学校に入ったら、お行儀良く勉強が出来るように教育されるのではなくて、こんなに元気に楽しく友達と暮らせるのかなと思ったのです。
実際、我が母校は生徒に活発な活動を推奨する学校でしたから、入学してからも、怖い女の先生にテニスラケット片手に追い回されながら必死に下校時刻を守るために廊下を駆け抜けたり、部活に明け暮れたりして、元気に楽しく暮らせました。やはり休み時間の印象は大切なのです。

さて、少女Bの話に戻ります。
彼女は必ず同じ時間の電車に乗り、授業の15分前にやってきて社会のテストの見直しと勉強をしていました。ある時は5分前に必死に階段を駆け上がってきました。「電車が遅れちゃったの!テストの勉強しなきゃ!」と叫んで急いで日能研鞄を降ろしました。「まだ5分あるよ」と言うと、「あと5分しかないじゃない!いま覚えるから待って!」と叫んで一生懸命白地図と向き合っていました。
彼女の中では勉強をすること、塾にいくこと、塾で先生とテストをすること、それは嫌なことではなかったのでしょう。訳があっても遅刻したくない大切なことだったのでしょう。彼女にそう思ってもらえたこと、それは私にとってとても嬉しかった。
お母様からもお電話で「娘が家で自分で勉強をするようになった」と聞きました。本当に良かったと思います。

結果が全て、じゃない。

彼女は12月、A1クラスの皆が偏差値30台で有り続ける中、ひとりだけ偏差値45をこえてクラス内でトップを走っていました。
その成功経験が彼女に自信を持たせたのか、結果が残念だったとしても、最終的には笑顔で第二志望の中学校へ入学を果たしたのです。

子供達の生きる道はまだまだ始まったばかり。
受験に失敗したとしても、親としては後悔が多かったとしても、子供にとっては沢山の経験と沢山の成長と、そして大切な思い出になるのです。

中学受験をしてよかった。あのとき、あれだけ勉強をしてよかった。
中学受験をした大学生、社会人はそう思う人が多い。確かに小学生という貴重な時期を潰しているけど、その代わりに、中高のんびりできたのです。
頑張るのは親もですけど、子供もなのです。

いや、子供が主役なのです。

結果がどうであれ、子供が前を向いて自分で決めたことを頑張った、そのことにはとても大きな価値があると思いませんか。
お金では買えない、凄い人生経験をさせてやれたと思いませんか。

私は、受験を乗り越えて顔つきが変わった子供たちを見るのが楽しみです。

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