前回は、宿題について、親の出来ることについて語った。
この記事の最後に、地理の小テストを使った「成功体験」学習方法を載せておくので参考にしてほしい。
そもそもなぜ子供は宿題をやらないのか?
子供は社会経験に乏しいので、〆切を守ったり計画通りに進めることが苦手である。それは仕方ないことだし当然のことである。
大人の自分と比べて今目の前にいる子供を非難する人もいる(「うちの子は全然宿題をやらないんです。宿題をやるのは当然のことなのに!」と言う)が、果たして、自分が子供の頃どうだっただろうか?親がなにも言わなくても計画的に宿題を進めていただろうか?
進めていた人はこれから子供の気持ちを理解するように心がけて欲しい。進めなかった人は子供の頃の自分を思い出して欲しい。
宿題をやらない子供の気持ちを考えてみよう。
それは当然、宿題を優先すべきものと思ってないからである。
それに、宿題はつまらないし、やりたくない。
これが逆に、やらなければいけないものと思っていたり、楽しいモノと思っていたり、やりたいなと思うモノならばやるのである。
だから、ゲームをしたり、テレビを見たり、遊んだりして、なかなかやらない。
つまり、子供に宿題をやってもらおうと思ったら、「優先すべきもの」と認識してもらうか、それとも「やりたいと思う」ようになってもらうしかないのである。
宿題は「優先すべき」「やらなければいけない」と思う子もいる
時々、珍しいことに、宿題は絶対にやらなければいけないと思っている子がいる。きっちりしっかり進める子である。7月中には終わっているなどという場合も多い。一体こういう子の頭の中はどうなっているのだろうか?
こういう子に、まず、「宿題は楽しい?」と聞くと、「別に」とか「楽しくない」という場合が多い。だが、彼らにとって宿題は「やらなければならないもの」なのである。
こういう子は基本的に大人びていて、大人相手だと「いい子」である(子供相手のときは含まない)。
挨拶もしっかり出来る子が多いし、生活習慣も規則正しいことが多い――つまり。親が厳しいことが多い。親が厳しく、宿題にもうるさい。
親にうるさく言われないためにさっさと終わらせるのである。
あるいは、さっさと宿題を終わらせているいい子の自分が好きなのである。
まあハッキリいうと、このタイプは反抗期~大人になる時に壁にぶち当たって苦労することになるが、子供時代はイージーモードである。申し訳ないが、このタイプに子供を育てたいと思っている親はちょっと踏みとどまって欲しい。
このタイプは世間体こそ良いが、自主性が凄くあるかといえばない。親の目、先生の目、上司の目、先輩の目を気にして、良い姿を自動で繕うようになる。そういう大人になってほしいとは私は思わない。
だから、出来れば、いい子に育つことを期待しないで、もう片方のやる気のほうの項目の解説を大切にして欲しい。
勉強を自ら楽しくやる子とは?
まず、彼らがやっていることはもはや「勉強」ではない。「学習」なのである。学ぶことを「強いられている」ことを「勉強」という。自ら学び、習うならばそれは「学習」なのである。
彼らはどうして楽しく「学習」するのだろうか?
……彼らにとって、学び、習うことは「楽しいこと」「おもしろいこと」なのである。
・何にでも興味がある
・集中力がある
・できるからたのしい
・知っていることが増えることに喜びを感じる
・将来なりたいものがあるので好奇心が強い
こういう傾向がみられる。
逆に考えてみると、宿題をいつまでもやらない子にはその逆の特徴があるということなのである。
・何に対しても特にやる気は無い
・集中力もない
・できないからやりたくない
・知りたいと思わない
・将来なりたいものはない
どうしてやる気も将来の夢もないのだろうか?
まあ、昔に比べると定番の夢という回答がなくなりつつある。
昔は「野球選手」だの「サッカー選手」だの、「お菓子屋さん」だのが許されていたが、現在はそういう回答をする子は少ないだろう。
いまや中学生に将来の夢を聞いて「公務員」と答える時代である。
公務員は職業ではあるが、仕事内容で選んでいるのではない。雇用形態である。それもどうかと思うが、なりたい職業があるというだけマシである。
私は何人も「将来の夢はない」という子供に会って話を聞いてきた(むしろ、何故夢が無いのかということを私が興味本位でインタビューしまくっていた)。すると、彼らの重大な共通点が浮かび上がってくる。
危機感がない?
A少年の場合。
状況:中学受験をし、中高一貫校へ入学。まずいとは思っているものの危機感に欠け、進級の危機に。
夢など:特になりたいものはない。大学の学部くらいは漠然と決まっている程度。
自信:好きなものはあるが大声では言えない(ゲームなど)。
会話:普通に「いい子」。敬語も問題なし。好きな物の話になると饒舌になる。
改善例:暗記が嫌いとのことなので、詳しい説明をし楽しく理解してもらうことで自力で問題を解くことができるようになり、勉強に前向きになった。
B少年の場合。
状況:中学受験をし、中高一貫校へ入学。親に叱られながら管理されながら勉強するも、進級の危機に。
夢など:一応あるが、自分との差がありすぎて口にできない(医者)。
自信:英語については自信がある。数学は好きだが成績は悪い。
会話:普通に「いい子」。返事だけは良い。スポーツ系。
改善例:塾側が厳しい親との関係に介入し、息子の不満点を親に改善してもらう。息子のやる気、学習習慣は塾側で管理し、タイマーで反復学習を指導。反復学習によりテストで出題された類似問題に正解できるようになった。
C少女の場合。
状況:中学受験塾に入っているが6年9月時点での成績が偏差値30台。天然で危機感がない。
夢など:好きなことは沢山ある。
自信:自信があると言えるほど成績がいいとはお世辞にも言えない。
会話:おしゃべりでコミュニケーション能力が高い。親が共働きで、自分のことは自分で決められる性格。
改善例:第一志望校を自分で決定してもらい、過去問を元に必要なレベルや問題を一緒に分析、小テストや過去問では常に目標点数を「自分で」定めて、クリアできるようにしてもらった。これにより、家でも自分で勉強するようになり、最終的には偏差値48に達した。
このように、危機感のなさは非常に重要な注目点となっている。
「成功体験の少なさ」=無力感?
大人でもそうなのだが、「自分は(なんだかわからんけど)できる!」という人物は、実際にできてしまうし、できなくてもできるまで続けるので、結果としてはできるようになる。
しかし、「自分は(どうせ)できない」と思っている人物は、あきらめてしまうし、頑張ることもしない。危機感があったとしてもあきらめのほうが上回ってしまうのである。
成功体験を積み重ねろ!
これは私がよく、社会が苦手な子供にやらせる方法である。これを行うと、8割方の子供は笑顔になるし、悔しいという気持ちを覚えるし、授業にも集中する。残りの2割はというと、本人自体に問題があるというより、その授業自体に参加したくない理由があることが多い(親に強制的に通わされているなど)。
1,関東地方などの白地図を用意し、まず地名テストを行う。
抜き打ちで行うので間違いなく出来ない。ここで出来る子であればこの方法は必要ないだろう。
2,出来なかった地名を「答えを写す」のではなく、「地図帳で調べ、写真も見て画像で認識する」。
答えを写すと単なる文字情報の暗記になる。嫌いな文字情報は頭に入ってこないのでNG。
地図帳で調べ、ついでに要らない雑学も習えればバッチリだ。勉強ではなく雑学として覚えることを推奨する。
3,5分タイマーで計り、できる限り覚えて貰い、再テストを行う。
5分間計り、その「赤ペンで自分の字で間違いを直したプリント」を見つめて覚えてもらう。
覚えている間は一切口を出さないこと。子供に任せる。
再テストは8割合格とする。テストを始める前に、何個以上で合格と伝える。
4,不合格であれば、もう一度5分与え、できる限り覚えてもらって再テストを行う。
同じく口を挟んではいけない。
再テストは間違えたところだけではなく、全てをもう一度行うことが大切。「ここなら覚えてるんだけどなあ!」という気持ちを味わわせよう。
3~5回行えばほとんどの子は合格できるはずだ。子供は集中して覚えさえすれば、その場で3回くらいで覚えることが出来る。
これを全ての学習に取り入れると良い。
時間を計ることでゲーム・クイズ感覚になり、勉強らしさが薄れる!
お勉強しているというより、クイズをしているのだと思えば俄然やる気が出る子が多い。
男の子は「よし、勝負だ!8割できてれば合格。何回でクリアできるかな?」とか言うとやる気が出る。
女の子は「前より一つでも多く覚えるようにしよう!一個でも多くできてればいつか全部できるよ!」と言えば安心する。
自分の手で直すということ
親が、先生が、赤で直してやってはいつまでも「勉強させられている」になってしまう。
子供が自分で勉強し、わからないところを聞くようになる。それが理想ではないか?
合格できなかったとき、責めずに笑顔で再チャレンジを進める。
合格できなかったら、盛大に悔しがったり褒めちぎったりしてあげよう。
「あー!あと3点だったのにね~!もっかいやろう!」とか
「さっきより2つもできるようになったね!次は3個できるようになろっか!」とか。
決して責めてはいけない。繰り返しやり続ければ絶対にいつか合格できるんだ、合格できるまで側にいてくれるんだ、そう子供に思わせることだ。
合格できなければダメという表現はもうすこし上のレベルに言うことで、このレベルは側で見ていてやることが大切なのだ。
是非、やってみてください。
私が塾で実際にやっている方法ですから。
日能研の地図教材
日能研で実際に教材として使われているものです。