あちこちに方法論は溢れているけど、
第三者から見た客観的な親御さんの気持ちみたいなものってなかなか記録に残ってないものなので、親の話をメインで書いておこうかなと思います。
今回は、自分の子供がよくわからなくてとにかく悪い結果を予防しようと行動した結果、子供に「挑戦する前から決めつけないでほしい」とガチギレされた親の話です。
親子の気持ちのすれ違いがわかる会話
母「勉強するならテレビの音下げようか?」
娘「いい、外でやるから(退出)」
たったこれだけのやり取りですが、実は親子のすれ違いがわかる会話でした。娘の言い分はこうです。
私の勉強より、結局自分がテレビを見たいというほうが優先じゃないですか
「私の勉強を本当に応援しようとしているのなら、テレビの音を下げるんじゃなくて消してくれるはず。
下げようか?って、まるで子供の勉強に協力しているあたし偉いみたいな態度とられるのが腹立つんです。
私の勉強より、結局自分がテレビを見たいというほうが優先じゃないですか」
大学入る前から「留年だけはするな」
「あの人は、自分が留年したからって、大学入る前から私に留年だけはするな、したら中退させるなんて脅すんです。
自分は留年しても薬学だったからなんて言い訳するくせに」
危なくない道に行ってほしいだけ
「結局、私の為を思ってるんじゃない。
私を見ていて自分が不安だから、私に危なくない道に行ってほしいだけなんです」
一体この親子はなにがどうしてこうなったんでしょうか…
幼い頃からおとなしかったので何を考えているかわからない我が子
優秀なお兄ちゃんがいる高校生の妹さんでした。
お兄ちゃんは「いちいち面倒見なくても自分でなんでもできた」そうで、勉強や進学に関しても優秀、親が困ることなどなかったそうです。
大学での勉強も順調でまったく問題がないそう。親も期待しているようです。
一方妹はというと、幼い頃から何を考えているかよくわからなかった。
親も電話で
「何をしたいのか、どこに進みたいのかもわかりません、ハリウッド映画が好きでよく見ているというくらいで」
と言う。
だから、「何がしたいのかわからないなら、洋画が好きっていうなら英文科でもいけばと言ったんです。そしたら本気ではやりたくないって言われて」、
「部活や習い事もあまり続かなくてすぐやめてしまって」
という程度の情報しか親御さんからは得られませんでした。
娘を理解することを諦めた親
ここでわかったことは、親御さんは、なぜ妹が色々続かないのか、なぜ好きなものを追求したいほどの欲がないのかを知らなかったということでした。
おとなしくて、考えてることがわからなくて、そう、お兄ちゃんと違ってよくわからない子だったのです。
だから、大学付属に入れて、とにかく大学まではなんとかなってくれとあきらめていたのです。
娘を理解することをあきらめて、お兄ちゃんと比較して、できないところばかり見ていた。
何がしたいのかもわからなくて、映画が好きなことくらいしかわかってなかった。
そういう親子関係でした。
娘「なぜうちの親は女子大に行くよう勧めてくるんだろう…」
娘が、先生、私わかりません、と言う。
成績が悪くて付属の大学にはいけないかもしれないとわかってから、親は執拗に女子大への進学を勧めていたのですが、私にも娘本人にも理由はわかりませんでした。
まず、私がお電話で話を聞いたときは、
ギリギリで進学してもついていけなくて中退されたら困るから、就職に強くて面倒見のよい適当な女子大へ入ってもらったほうがいい、という理由でした。
しかし、お話を伺うと、お母様のイメージする女子大とは、本女(ポンジョ。日本女子大のこと)や東女(トンジョ。東京女子大のこと)、白百合などの有名女子大のことでした。
これらの女子大は大学付属に入れないレベルの子が指定校推薦で移動して受験せずらくらく入れるほどぬるくなどありません。
それこそ模試での彼女の偏差値では到底E判定しかでないほどの難易度なのです。
お母様には、娘さんのレベルでは女子大といっても本当にレベルの低い所にしか入れません、とお伝えしました。
有名女子大はおもっているよりも人気が高くて第一志望の子がいて偏差値が高いのです、と。
このあたりで、就職がひっかかっていることがわかってきました。
つまり、女子大に入って一般職で就職を決めてほしいということなのでしょう。
しかし、ここからがひどかったのです。
子どもへの思い込みと将来の決めつけ
娘「うちの親、ありえないです。最低です。今日、内部推薦の学部を就職に強いから商学部にしようかなって言ったんです。そうしたら、
「うそ、あんた就活する気なの?どこにも受からないだろうから、お父さんの知り合いに紹介してもらおうと思っていたのに。
そこらへんの女子大にはいってもらってコネで事務職につけてもらおうと思っていたのに、下手に四大(共学の四年制大学)にあがってしまったら、コネを使うのにかえって聞こえが悪いじゃない。」
って…。挑戦する前からそういう決めつけをしないでほしい。ひどすぎる」
ああ、やる気のない子で何考えてるかわからないからって、高校生の時点ですでにこの子は自力で就活しないと思いこんでコネで就職させる前提で物事を考えていたんだ、とわかりました。
だから女子大にこだわっていたのです。だから、中退されとこまる、だったのです。
何を考えているかわからないからって、とりあえずなんとかさせないと「自分が」不安だから、彼女の意思とは別に、彼女の中で考えがまとまったり育ったりするのを待てずに、彼女に無許可で、就職先まで決めようとしていた。
お母様の中ではそれが正義だったのでしょう。でも、それって、悲しい。
この件の直後、娘は親に珍しく直談判して塾の通塾回数を倍にしました。
お母様はお電話で驚いていました。
「何が何でも付属の大学に入ってやるって言って、塾を増やすって…。なにがあったんですか、先生!」
いや、私こそ驚きました。
私も塾を増やすなんて相談聞いてませんでした。
私の勧めではなく、彼女が自分で決めたのです。
親の敷いたレールをぶち壊してとにかく進んでみた娘
結果からいうと、ギリギリで付属大学に進学できました。
MARCHに名を連ねる有名大学の、就職に強い学部です。
入ってからも最初に述べたように留年の件でまだ脅されているそうですが、まあ、とりあえずよかった。
まずは、それまでの経緯を書いてみたいと思います。
①成績が上がったのに上位2ケタに入れなかったから認めてもらえなかった
夏に親に啖呵を切って塾を倍にし、秋からはより効率的な勉強を試行錯誤しました。
学校の先生からも「最近頑張っている。前より英語が伸びている(学年下の方から100位くらいまで上がった)」と褒められたけれども、
親はその成績通知表の返信に「2ケタに入れないなんて、やる気も結果もなくて残念です」と返したそうです。
娘は怒っていました。
こういう親だとわかっていたけどサイテーだと。
101位だったんですよね。99位じゃなければだめだったんでしょうか。
170番くらいだったのが101番になっただけでも偉いのに、2ケタじゃない、とケチを付けられた。
ああ、こういうのがいままで娘のやる気を奪ってきたのかもしれないと思いました。
②予習をしていたら再試に引っかかったと勘違いされて思い込みで怒られた
中間試験が終わって、期末のために新しい分野の予習を始めていました。
そうしたら、なんでか急に怒られたのだそうです。
「テストが終わったのに勉強しているだなんて!どうせ再試験に引っかかったんでしょう!」と。
決めつけでした。
再試験には引っかかっていないし、前の分野ではなく次の分野の予習をしていたのに、何の勉強をしているのかも聞かずに決めつけで早朝から叱り飛ばした。
娘はそれが嫌でなおさら説明する気をなくして、家で勉強するのをやめました。
「家で勉強していてもなんでか怒られるし、家で勉強していなくても怒られるから、家にいたくない」と。
③進路希望を提出直後の三者面談で娘を貶す
先生も大丈夫ですよと言っているのに、うちの娘は本当にダメで、いまからでも指定校推薦でいける女子大にいかせたいと言ったようで、娘は呆れていました。
まとめ
親は自分が不安だから娘の道を制限しようとしていた、ということがよくわかるケースだったと思います。
お兄ちゃんと違って、自分を不安にさせる不安要素が多かったのでしょう。
娘の考えていることを理解しようと思うより、自分が不安でない道を押し付けてそこに押し込むほうが不安がなかった。
そして、それが露呈したとき、娘は反旗を翻した。
我々、教える側もですし、親御さんたちも、一度立ち止まって考えても良い問題です。
ほんとうにそれ、「あなたのためだから」なのでしょうか、ということです。
私のため、なのではないでしょうか。
私が不安だから、私の満足を満たしてほしいから、だったりしないのでしょうか。