忘れにくくなる「暗記」の種類と使い方

前回記事では、エビングハウスの忘却曲線と「短期記憶」「長期記憶」について。

では、ここからが本題。どうしたら「暗記」したものを忘れにくくなるのでしょうか?

忘れにくくなる「暗記」の種類

「英単語」に関しては、随分前に書いた、単語の暗記に必勝法はあるのかという記事がある。今回は英単語に限らず、全般的に「暗記」について見ていきたい。

  • 五感を使って体で覚える「暗記」 例)音読、映像記憶、手で書いて覚える
  • 意味で覚える「暗記」 例)歴史漫画、単語や漢字の語源の利用、エピソード記憶
  • 思い出しやすさを高める「暗記」 例)ゴロ合わせ、反復学習、歌、位置記憶

こう見ていくと、「暗記」といっても色々と種類があることがわかる。これらを組み合わせればより忘れにくい「暗記」をすることができるのではないか?ライフハッカーで「電子書籍より紙の本で読んだほうが、内容をよく記憶できる」なんて記事が出てしまったのも当然のことだと私は思う。これは五感を使って体で覚える「暗記」に当たる議論なのである。

「短期記憶」でもいいからとにかくたたき込みたい場合

もう三日後にテストが!というような場合、五感×思い出しやすさの組み合わせで行こう。

まず、覚えたい部分を音読しながら手で書く。手で書くことで、漢字も同時に覚える。音読テープを聞くのではなく、自分で音読するほうが効果がある。そして、ゴロ合わせを使う。こじつけるのである。年号のようにゴロ合わせが既に存在しているものはいいが、他人が作った語呂合わせより、自分で作ったゴロ合わせのほうが記憶に残るので、余裕があれば自分で語呂合わせを作ると良い。作った語呂合わせをリストにして持ち歩き、人の居ないところで音読。目を瞑って同じ事が言えるかどうか再び音読だ。

★POINT

・ゴロ合わせは自分で作るほうが記憶に残る
・テープを聞くより自分で声に出して音読すべし

・音読したあと、目を瞑って同じ内容を音読できるか試す!
・筆記試験対策なら手を動かして漢字やスペルを覚えなければ減点されてしまうので注意。

「長期記憶」にして忘れないようにしたい場合

長期記憶で重要なのは「木を見て森を見ず、にならないようにする」ことである。どういうことかというと、重要年号だけ覚えていて歴史の流れを覚えていないというような、記憶が単発の連鎖になってしまわないようにするということである。

★よくない例(記憶が単発の連鎖になっている例)

1192 源頼朝、征夷大将軍
1221 承久の乱
1274・1281 文永の役・弘安の役

★よい例(記憶が歴史の流れに沿っている例)

<鎌倉時代>
守護地頭の配置→源頼朝征夷大将軍
将軍三代で途絶える&執権政治→天皇側の反発=承久の乱
武士のルール定める=御成敗式目
元寇2回→御恩と奉公が崩れる。徳政令→幕府への不満高まる
後醍醐天皇が出てくる→幕府滅亡へ

よい例のほうは年号が一切でてこないが、流れは正しい。よい例のほうで覚えていれば、年号は「1180年頃」とか「1300年代前半」とかでぼんやり覚えておいて、後で正確にたたき込めば良いだけである。だから、意味で覚える暗記において、歴史漫画や歴史小説、語源の利用は大変有効なのである。
悪い例のほうは、年号と出来事は正確に覚えているが、「その出来事が鎌倉時代においてどんな意味をなしえたのか」がわからない状態になっている。これが「とにかく覚えなさい」と言われた場合の弊害でもある。

NG例「とにかくそういうものだと思って覚えなさい」

これはいわゆる丸暗記である。意味を理解せずにまるっと覚える。意味を考えずに「短期記憶」にたたき込むので、すぐに忘れてしまう。

「とにかくそういうものだと思って覚えなさい」と言ってしまう人は、言ってしまう人自身がそれが何なのか理解していない事が多い。だから、どうしてなの?と聞かれても「そういうものなの!」と答えてしまうのである。そこで、「なんでだろうね?」と反芻して、一緒に辞書を引くなり調べるなりする努力も必要なのではないかと思う。……実の所、忙しい現代の保護者には難しいし、自分が挫折した科目で子供に質問されたら標題のように答えてしまうのもわかるのだが、こどもが「世の中は理不尽だ」とスネる前に、大人が人肌脱ぐべきではあると思う。せめて、「じゃあなんでなのか調べてみよう」と、さも自分は知っていてクイズを出しているかのような振りくらいはしておこう。

子供が好きなモノで覚える方法

  • 歴史は嫌いだがゲームは好きな男の子→「信長の野望」や「戦国無双」をやらせると旧国名や戦国武将をすらすら暗記できる。
  • 英単語が嫌いな男の子→「遊戯王」「ポケモン」などの技名をヒントに英語に興味を持たせる。

このように、勉強は勉強で覚えなければいけないというルールはないので、積極的に好きなモノを活用すると良い。

実際に自分が中学生の男子を教えていた時は、英単語を解説する際に出来るだけ遊戯王やポケモンから探して教えるようにしていた。すると生徒も理解が早いし、さらに忘れにくくなるので一石二鳥である。

究極の暗記術「位置記憶」「映像記憶」など

これは…もしかしたら子供には難しいかもしれない。しかし、暗記のスペシャリストが実際に使っている方法であり、効果はそれなりに高いので一応紹介しておこう。

「位置記憶」とは?

例えば家の扉を開ける。玄関で、「鎌倉幕府ができる」と唱える。次に、玄関から廊下を歩いてトイレへ向かう。トイレに座って、「源氏の将軍は3代で途絶えて執権政治になったな~」と思う。トイレを出て、洗面所へ向かう。洗面所で鏡を見ながら「元寇2回で褒賞が十分じゃなかったから幕府の信頼が揺らいだんだったなー」と思う。洗面所から自室に向かい、自室の扉を開けて、「後醍醐天皇を中心として鎌倉幕府滅亡に流れていったんだよな~」と考える。これで終了である。

自分が普段通るとあるルートの上に、出来事や暗記したいものを配置し、そこを通りながら繰り返して思い出すようにすることで…つまり、位置と記憶を結びつけることで思い出せるようにする。これが位置記憶である。

上の例なら、鎌倉幕府の流れを思い出したい場合は家の扉を開ければ良いことになる。それ以外にも暗記したい場合は別の場所や別のルートを考える。位置を同時に覚え、実際に通り、目で見た光景と暗記事項を結びつけることで忘れにくくなるし思い出しやすくなるというものである。

「映像記憶」とは?

ノートや教科書を写真のようにそっくりそのまま覚えてしまう方法である。ノートの見開きを見渡し、じっと見つめてから目を閉じ、瞼の裏に同じ光景を思い浮かべる。まったく同じ光景を思い出そうとするだけではなく、ノートの左上から右下までどんなことが書いてあったかをなぞるように思い出していく。こうすることで、試験の時も「あれは、あの地図があったページの右下に書いてあったはず」と思い出すことが出来る。

この学習方法の良いところは、左脳ではなく、右脳を使用する点にある。右脳は記憶容量が大きく、価値の有無にかかわらず暗記をすることに適している。感情やエピソードが結びつけばより忘れづらくなる。

映像記憶に中途半端に頼ってしまうと、あの辺に書いてあったのは思い出せるが具体的な単語が思い出せない!ということになりかねないので、最初に説明した、手を使って書いて覚える方法や、音読する方法を併用して、試験で点数を確実に取れるように補強する必要はある。

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Sym
ベテラン塾講師です。
中学受験・大学受験・大学院受験は自分が一般入試で経験。

なぜ先生をしているかというと、その人個人に合った方法を探して「できた!」と喜ぶ姿を見るのが好きだからです。

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