(注)高校生向けに話をしますが、中学生や小学生にも一応つかえます。
最近、高校生から、現代文が解けないという相談をよく受けるようになりました。
特に、小学校のときは国語が得意だった人に多く見られる現象でもあります。
なぜ、現代文が解けなくなってしまうのでしょうか。
何人かの実際の事例から導き出した「なぜできないのか?ポイント」を紹介します。
なにが原因で現代文が解けないのか?
そもそもなぜ現代文は解けるのか、そこから考えていきましょう。
むしろなぜ現代文は(特に勉強しなくても)解ける(気がする)のか?
現代文は、我々日本人の母国語です。
ですから、普段喋っているときにも、書くときにもつかっています。
できるのが普通で、できないのは理解力が無いのだと勝手に思われていますが、そうではありません。「できる」ためには、以下の3つのポイントが重要になります。
- 評論や随筆で語られている「テーマ」を知っているかどうか
中学入試頻出例:「ことばの力」「自然と人工」「環境破壊」など
大学入試頻出例:「西洋と東洋の文化の違い」「人間のアイデンティティ」「安楽死」など - 接続詞等の「論理」を使って、筆者の考えがどこにあるか探す(気付く)ことができるかどうか
「しかし」の後には反対の内容が来る、「それゆえ」が来ればまとめになる、など - 読む「スピード」があるかどうか
長文に素早く目を通して内容をざっくりと理解できれば設問にも答えやすくなります。
まず、「テーマ」を知っていれば、大体、どんなネタでどういう展開になるのかが予測できてしまいます。
ですから、読んでいても楽勝なのです。ハイハイあなたは賛成なのね、とか、反対なのねそうかそうかとか…。
どうせ、環境破壊のためにはこれこれをやめましょうとかいうんでしょ、など、先まで予測できることもあります。テーマを知っているかどうかで、大きく差が付くと思うのです。
つぎに、テーマがわからなくても、「論理」があれば、さっぱりわからない話だったとしてもなんとかついていくことができます。
例えば、こんな文章はどうでしょう。さっぱりわからないと思います。↓↓
※難しい文章の解説は要らないよという人は読み飛ばして「さいごに」へ。
超難しい文章を「論理」で理解してみよう!!
(前略)『職業としての学問』の中で、ヴェーバーは現代の知が「神々の闘争」と言うべき不確実性に直面していると述べたのですが、それはこのためだったのです。しかし、近代に成立した社会科学は、一般に、このような不確実性を認めようとはせず、自然科学におけるニュートン力学をモデルとして、確実な知をもたらすものこそ、科学の名にふさわしいと主張してきました。これに対してヴェーバーは、このように硬直した近代知がすでにその生命を使い果たし、限界点に達してしまったことを見通していました。
山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』(岩波新書,1997年)5頁
ヴェーバーがわかっていれば「神々の闘争」の意味はわかりますが、そうでなければかなり意味不明です。ですが、少し論理を見てみましょう。 まず青字の部分は一番わけわからないところです。前略部分を読まないとわかりません。これは置いておきましょう。 そのあとに「このため」と「しかし」がでてきます。ヴェーバーが青字をいった理由=赤字であることがわかり、「しかし……一般に」、と、「これに対してヴェーバーは……」の対立構図なのがわかります。 とりあえず、一般とヴェーバーが逆のことを言っていることはわかると思います。 まとめます。 ヴェーバーが「A」という。しかし、一般は「B」、これに対してヴェーバーは「A’」と述べているわけです。 Bが、自然科学をモデルとする「確実な知」、その反対なので、ヴェーバーのいうAやA’とは、「不確実」な知を指すのだとわかります。「不確実」な「知」が「神々の闘争」といわれているわけです。 つまり、数字や理論をもってかならず一定の法則が存在すると証明できない不確実な知については、識者があれこれいうけれどもだれも何が正しいか証明することもできないわけです。 これをまるでギリシャ神話の神々の喧々諤々な議論のようにたとえているのでした。
さいごに、スピードがあれば、最悪、論理を展開しながらでもなんとか難解な文章を解くことができるでしょう。これが、スピードがないと設問に答える時間も内容を理解する時間もありません。
つまり、現代文が解ける人は、「その話のテーマがわかる」、「話の流れ(論理)がわかる」、「スピードがある」ということになります。
現代文が解けない人のための強化方法
上で述べた3つのポイントを押さえるように学習します。
すなわち、まず「知っているテーマを増やす」。
つぎに、「知らないテーマが出てきたら論理で解けるようにする」。
さいごに、「総合的にスピードを高める」です。
ポイント1 テーマを知っておくことで断然有利にする!
後輩とも話したのですが、なかなかテーマ本というものがありません。キーワード本はあってもテーマ本がありません。
よく出る語句の説明がメインではなく、テーマが中心の本のこと。例えば、「社会科学」というテーマがよく出ること、「哲学」というテーマがよく出ること、そこに「抽象」や「具体」といった語句が出ること、どういう論理展開やネタが多く出るのかが中心で構成される本のこと。
この本のサンプル画像がわかりやすい。しかしこの本は難易度が高すぎる×…
よく出る語句の説明がメインになっている本のこと。
まあアマゾンのレビューにもあるように、キーワード?!そんなのどのみち暗記するわけじゃないのでいらないです。辞書をひけばいいのです。
なぜ我々日本人は、英単語はちゃんと辞書を引くのに、日本語の語句は辞書をひこうとしないのでしょうか…
そこが分かった気のまま点数が伸びない理由でもあります。
どこかに、テーマ別になっていて、例文も載っていて、解説がのっている、高3の偏差値40くらい・高1~2くらいから使えるものはないかな~と本屋を歩き回ったら、ありました。
高校生用の場合、これくらいしかなかったというのが正しいのですが…
これです。旺文社さんの現代文重要キーワード書き込み式ドリル。
中身はアマゾン見れば画像が何枚もあると思うのでよくわかります。
例文も長めに載っていますし、非常によろしい教材かと思います。書き込み式ドリル部分に意味があるのではなくて、本の構成自体に意味があると思います。
既に述べたように、
↓
このテーマにはこういう単語がよく使われるよ!
↓
最後に実際に使われてる長文を読んでみよう!
という流れになっている。この構成に意味があるのです。
小学生の場合
小学生の場合、結局、本を雑多に読んだ量がものをいうといっても過言ではありません。
雑多に読んでいる子は知識もテーマもある程度網羅していますから、強いです。
とにかく読書をというのはそういう意味でもあると思います。
しかし、小学生に無理に新聞を読ませる必要はないと思います。苦痛に感じる子が多いはずですし。
文を読む、書を読むのと、テーマを知ることは切り離してもよいはずです。
本を読まなくても博物館に行けばテーマや知識を得られるのと同じ。
小学生ならばこうした方法のほうが有効だと思います。
ポイント2 解き方を身につけて「論理」を使いこなし、わからない文章をなんとかする!
まず、言葉遊びかもしれませんが、13歳からの論理トレーニングがいいです。とてもわかりやすく、誤解を招きやすい表現を練習させてくれます。
タコとかイカとかわかりやすい例を使ってまるで子供扱いか!!って思うかもしれませんけれど、結構間違えるんですよね……
侮らず地道にやってみてください。
つぎに、実際の練習に入ります。
高校生、高校2年生以上であれば、出口先生の「システム現代文」シリーズがとても良いと思います。
まず、「システム現代文 (バイブル編)」から行い、すすめる通りに従って自分に必要なものを購入していくのが良いと思います。
実際の練習には、出口先生が問題集も出しているのでそちらを活用していくのがよいと思います(出口の現代文レベル別問題集 1(超基礎編))。
ポイント3 読むスピードをあげることで有利にする!
よく、読むのが遅いんです…という人がいます。いくつかポイントを説明しますので、実践してみてください。
- 一回で全部頭に入れようとしない。何度も読み直すことを前提にする。
- 漢字中心に目で追うようにする。送り仮名はあまり読まないようにする。
- 目の方向は、縦書きならば右上から左下に動かすようにする。一行読むために、目玉を上から下に動かすことを意識する。
- 文全体か1頁が目に入る程度の距離を保ち(二段の場合は一段分でよい)、右から左に目玉を動かすようにしてテキトーに内容をつかむ練習をする。
それでもダメという方は、是非やってもらいたいのですが、「音読しながら内容を理解することができるか?」。
音読しながら理解できるのであれば、声に出して読むスピードでは理解できるが、目で追うスピードでは理解できないということがわかります。
しかし、音読すると理解できない場合、声に出すことに集中してしまい、中身を理解していないことがわかります。
すると、もしや、目を動かしているときも、中身が伝わってこないのではないでしょうか?
目を動かしていても適当になんとなく目に付いた単語が繋ぎ合わさって意味が理解できるのが理想なのですが、そこまで至っていない場合、スピードの問題ではなく、テーマや論理の問題かもしれません。
まず、速読ではなく、精読からはじめてください。
さいごに
英語だと接続詞をちゃんと見るのに、日本語だと見ない人が沢山居ます。
母国語だからとナメてはいけません。
なぜなら、勝負する相手みんなが母国語なので、自分並みにできるかもしれないのです。
点数に結びついていないなと思ったら、まず、テーマと論理をしっかり固めてみましょう。それでもダメなら気軽にご相談ください。
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