【頌栄】物語文と社会が苦手な子の合格例<前編>

某年、某秋。私はとある少女に出会った。
お父様が受験に熱心な、そして本人も勉強熱心な日能研の六年生だ。
頌栄を第一志望にしたいが、国語が難しいのだという。

秋の段階ではちょっと頌栄は厳しいかなという偏差値であったが、結果から言うと合格した。

彼女を仮にAちゃんとしよう。
Aちゃんは理系の家庭で育ったため、総じて理系科目は得意で、逆に文系科目が苦手である。
お父さんからすると、文系科目はわかるのが常識で、理系科目こそ練習が必要だと思い、理系に力を入れて育てたようだ。
ところが、あまりに勉強勉強で育てた結果、一般常識とかけ離れた子供になってしまったのである。
少女漫画や少女小説は読んだことが無く、青い鳥文庫すらほぼ知らない。よく読む本は「松本清張の本」。それは12歳としては異常だ…。
算数と理科は秋の時点で十分な学力を保持していたけれども、国語と社会は問題だらけだった。

秋の段階ではこうだ。

算数=全ての問題や難問まで手を出そうとする傾向があるが、学力は十分。あとは過去問でテクニックを鍛える。
理科=同上。難問に時間をかける傾向がある。教科書に載っていない一般常識に関する問題がむしろできない。
国語=物語文記述が壊滅的。説明文はまだわかるほう。
社会=全体的に弱い。特に時事問題は壊滅的。

算数と理科については、まず過去問で目標点を決め、解答欄と問題を見て手を出す問題と出さない問題を決める。少し取り組んでみてすぐ解けないなと思ったら他の問題から解くようにし、一問をじっくりではなく、一点でも多くとる方法を身につけることで大きく前進し、平均点以上をキープできるようになった。

問題は国語と社会だった…

物語文が苦手。登場人物の気持ちが分からない。

とある物語文で、秋になるとつい電話をかけてしまう。心も寒いし財布も寒い。とあった。
なぜ秋になると心も寒くて財布も寒いのか、がわからないのである。秋になると寂しいという状態がわからないのだ。

他にも、青春小説のようなものや、スポーツ小説のようなものが出ると理解できなかった。
頌栄は女子校なので、親切にも少女が主人公のものが多く出てくれるようで、女の子の思春期の感情についての問題も出る。これが理解できない。女の子なのに一般的な女の子の感情が理解できないのである。
おそらく、頌栄を受ける大多数の少女にとってのサービス問題が、彼女にとっての鬼問だったのである。

まず、「説明文」と「記述以外の問題」でしっかり稼ぐ。

何度か彼女の国語を見させて頂き、お父様にお伝えした内容はこうだ。

「娘さんの読解能力を見させて頂きましたところ、説明文は克服できそうですが、登場人物の、とくに同世代の少女の気持ちが、思春期の少女の気持ちが理解できません。これは、問題を解くこと・教科書を暗記することでは克服できる能力ではありません。ですから、まず、説明文を完璧にしましょう」
「お父様のご要望としては記述問題をできるようにとのことでしたが、娘さんの記述能力を高めるよりも、記号問題や漢字での取りこぼしを減らすことのほうがすぐに点数に結びつくと思います。まずこちらを優先していきましょう

この方針にご理解いただき、早速、記号問題の取りこぼしがないように消去法(こちらの記事の「その5」を参照)を徹底したり、ご家庭での漢字練習を強化して貰った。

その結果、11月にはそれなりに「心情と記述以外」での点数は安定するようになった。
順調だった算数と理科の力もあり、国語が平均点未満でも合格者最低点には達するようになった。※社会は後で述べる

「心情」ってどうやって理解するの?!

お父様に電話でこう伝えました。

「娘さんの出来ない問題は例えばこうです。高校生の女の子が、好きな人相手にドキドキしたり、強がったりする心理を答える。他にも、小学生の少年が、同じクラスの好きな女の子をからかったりいじめたりする心理を答える問題です」

お父様も言葉に困り、「……どうしたらできるように、というのも変ですが、どうしたらできるようになるんでしょうね……」

お父様に尋ねたところ、人生でそういった所を苦労なされたことはないとのこと。自身が国語で苦労したことがないので、娘にも特別、国語の教育をしてこなかったというのです。当たり前にわかるものだと思っていたのです。
その結果、少女小説もテレビもアニメも見ないで松本清張を読む子になったのです。悪いことではないけど…ううーん…。

そこで提案したのは、まずは青い鳥文庫でも読みましょう、と。少女漫画でも読みましょう、と。
理解できないなら、こういう場面ではこうなんだというパターンを覚えるしかありません。
好きな子相手のときに恥ずかしがっていじめてしまったりするなんていうのは慣れていくのが一番です。

お父様に、「それは受験勉強より優先すべきことなんでしょうか…。六年生なのに」といわれたので「勿論、本を読む方です。読んで知らなければ解けるようにはなりませんよ。お嬢さんの頭の中には答えがない問題なんですから。教科書に載ってることならもうお嬢さんはできます」と伝えました。

実際に家で読ませてくれたのかはわかりませんが、最終的に物語の点数はある程度上がりました。ある程度、ですが。

記述問題を捨てる勇気

まずは記述問題以外をやろう、と少女には伝える。
過去問では、記述をまるっと残して他を全て解く。見直しもしっかりする。余った時間で記述に取り組む。

この方針にしたことで、「取れるはずだった」が劇的に減った。
記述は余力があればやればいい。記述がないと平均点に届かないなら、そこではじめて記述を練習すればいい。
二重跳びができないのに綾とびができるものか、ということです。

続きはこちら:【頌栄】物語文と社会が苦手な子の合格例<後編>
社会、とくに時事問題について書いていきます。